小規模個人再生とは
「小規模個人再生とはどのような手続きなのですか?」
と多くの方からご質問をいただきます。
小規模個人再生は、原則的な個人再生の方法で、給与所得者等再生を比較すると借金をより大きく減額できるケースが多いメリットがある債務整理です。
小規模個人再生でどの程度借金を減らせるのか、利用できる条件や給与所得者等再生との違いなどについて、お伝えします。
小規模個人再生もくじ(メニュー)
- 1) 小規模個人再生とは
- 2) 小規模個人再生の要件
- 3) 小規模個人再生の効果
- 4) 小規模個人再生と給与所得者等再生との違い
- 5) 小規模個人再生をするには
小規模個人再生とは
小規模個人再生は、個人再生の中でも原則的で多くの人に利用されている債務整理の手続きです。
個人再生とは、裁判所へ申立をして借金や他の負債を大幅に減額してもらえる債務整理の手続きをいいます。
任意整理と違って借金の元本まで減額してもらえるメリットがあって、たとえば500万円までの借金がある場合には100万円にまで減額してもらえる可能性があります。
個人再生には原則的な小規模個人再生と、会社員などの収入の安定した人だけが使える給与所得者等再生の2種類があります 個人再生のうち基本となるのが小規模個人再生で、将来、反復あるいは継続して収入を得られる見込みがある個人であれば、小規模個人再生で借金を減らせる可能性があります。
小規模個人再生であれば給与所得者でなくても利用できて、たとえば個人事業主やフリーランス、アルバイトの方なども収入さえあれば適用できます。
小規模個人再生の要件
小規模個人再生で借金を減額してもらうための要件として、再生手続きの開始要件と再生計画の認可要件の2つを満たさねばなりません。
再生手続開始要件
再生手続開始要件とは、裁判所へ個人再生の申立てをして再生手続開始決定を出してもらうための要件です。
再生手続開始決定が出ないと個人再生の手続きが始まらないので、借金の減額効果を受けられません。
再生手続開始要件を示します。
債務者が個人である
小規模個人再生は個人しか利用できなくて、株式会社や合同会社などの法人は対象外です。
借金総額が5,000万円を超えていない
個人再生を適用するには、住宅ローン額をのぞいて負債額が5,000万円以下でなければなりません。
小規模個人再生をおこなうための申述をした
個人再生の申立時に裁判所へ債権者一覧表を提出し、小規模個人再生をおこなうという申述をしなければなりません。
支払不能のおそれがある
小規模個人再生の手続きを開始するには、支払不能のおそれの要件を満たさねばなりません。
支払不能とは、現実に支払不能となっているところまでは不要ですが、このままでは借金返済ができなくなる可能性が高い状態をいいます。
将来、継続または反復して収入を得られる見込みがある
小規模個人再生の手続きを開始してもらうには、将来にわたって継続的に、または反復して収入を得られる見込みがある状況でなければなりません。
自営業者やフリーランス、パートやアルバイト、年金生活者、会社員などの方で、今後も収入を得られる見込みがあれば小規模個人再生を適用できます。
予納金が支払われた
小規模個人再生の手続き開始決定を出してもらうには、予納金を払わねばなりません。
官報公告予納金が13,000円程度かかって、個人再生委員が選任される場合には25万円以上の予納金がかかるケースもあります。
なお東京地方裁判所では個人再生委員の予納金を分割払いできるので、一括で25万円を払う必要はなくて、当初の1回目の支払いを確認できれば再生手続開始決定を出してもらえます。
再生計画認可要件
再生計画認可要件とは、借金を減額してもらうための再生計画が承認されるために満たすべき条件で、再生計画が認可されなければ借金が減額されないので、個人再生に失敗してしまいます。
再生計画遂行の見込みがある
まず、本人の提出した再生計画に実現できる見込みがないと、再生計画は認可されません。
たとえば収入額が低すぎて支払いに足りないとみなされると、再生計画遂行の見込みがないと判断されます。
再生債権者の一般の利益に反しない
個人再生では再生債権者の一般の利益に反しないことを要求されます。
再生債権者の一般の利益の具体的な意味については、後述いたします。
計画弁済総額が最低弁済額を下回っていない
計画弁済総額とは、個人再生後に支払うべき借金や負債の総額で、再生計画案が認可されるには、計画弁済総額が最低弁済額を下回ってはなりません。
最低弁済額とは民事再生法が定める最低でも必ず弁済しなければならない金額で、個人再生手続き内で債権調査の結果、確定した負債額をもとに定められます。
再生債権者による決議で可決された
小規模個人再生では再生計画が認可される前に再生債権者による決議がおこなわれますが、決議で可決されなければ再生計画が認可されません。
再生債権とは、個人再生後に債務者が支払わねばならない負債で、具体的にはクレジットカードや消費者金融、銀行などの借入が該当します。
未払いの奨学金や、友人や親戚などの個人からの借入金も再生債権です。
小規模個人再生の手続きでは、債務者による再生計画案の提出後に再生債権者による決議がおこなわれます。
実際に裁判所で集会が開かれるわけではなくて、決議は書面のやり取りによって進められるので、書面決議とよばれます。
書面決議において再生計画案が否決されると、小規模個人再生の手続きが打ち切られてしまって借金が減額されません。
否決となるのは、2つのいずれかに該当するケースです。
不同意の回答をした再生債権者が、再生債権者の総数の半数以上
再生計画案に不同意とした再生債権者の人数が過半数を超えると再生計画案は否決されます。
たとえばクレジットカード会社や消費者金融会社5社から借り入れをしている場合、3社が反対したら過半数となるので再生計画案は否決されます。
不同意の回答をした再生債権者の債権額が、再生債権総額の2分の1を超える
再生計画案に不同意とした債権者の債権額が過半数を超えると再生計画案が否決されます。
たとえば総借入額が500万円で5社から借り入れをしており、1つのクレジットカード会社からの借金が300万円、他の4社からの借金の合計額が200万円とします。
300万円のクレジットカード会社が再生計画案に反対したら、他の4社が賛成しても過半数となるので再生計画案が否決されて借金が減額されません。
再生債権者の一般の利益に反するとは
小規模個人再生で再生計画案が認可されるには、再生債権者の一般の利益に反してはならなくて、具体的には清算価値保障の原則を満たす必要があります。
清算価値保障の原則とは、債務者の所持する財産評価額については最低でも支払わねばならないとするルールです。
債務者の所持する財産よりも借金が減額されてしまうと債権者は納得しがたいです。
債務者を自己破産させたら債務者の財産が配当にまわされて、最低でも財産分の配当を受けられます。
むしろたくさんの多額の回収ができて、自己破産させる方が有利になってしまいます。
債務者が自己破産するより個人再生する方が債権者に損になってしまうようでは、債権者の一般の利益に反すると考えられるので、再生計画が認可されません。
再生計画案を作成するときには、清算価値保障の原則に反しないように財産評価を適正におこなって正しく支払金額を計算すべきです。
小規模個人再生の効果
小規模個人再生をおこなうと借金は最大で10分の1にまで減額されて、原則として3年、例外的に5年で返済していきます。
返済額を大幅に減額できるだけではなく、多くの場合は返済期間にも余裕ができて借金を払いやすくなります。
預貯金や保険、車などの財産も基本的には失われなくて、借金を減額できたり、住宅ローンつきの自宅も守られたりするケースが多々あります。
借金の減額効果
個人再生をおこなった場合の借金減額効果は、手続内で確定された負債の総額によって異なります。
民事再生法で定める最低弁済額は負債総額によって異なっていて、具体的な最低弁済額は以下のとおりです。
確定した負債の総額 | 最低弁済額 |
---|---|
100万円未満 | 全額 |
100万円以上500万円以下 | 100万円 |
500万円を超え1,500万円以下 | 負債総額の5分の1 |
1,500万円を超え3,000万円以下 | 300万円 |
3,000万円を超え5,000万円以下 | 負債総額の10分の1 |
なお負債総額は個人再生手続き内で債権調査をおこなって確定するので、申立て前に債務者が把握している金額とは異なる可能性があります。
住宅ローン特則を利用する場合には、住宅ローンを省いて計算するので、たとえばカードローンなどの負債が500万円、住宅ローンが3,000万円の場合、住宅ローン特則を利用するなら負債総額は500万円としますが、住宅ローン特則を適用しなければ負債総額は3,500万円として計算します。
分割払い
小規模個人再生で借金を減額してもらえたら、原則として3年の分割払いとなりますが、3年では支払いが苦しい特別な状況があれば5年間での分割払いが認められる可能性もあります。
返済方法は毎月1回や3ヵ月に1回などさまざまですが、3ヵ月に1回の返済となるケースが比較的多数となっています。
小規模個人再生と給与所得者等再生との違い
個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類があり、多くのケースでは小規模個人再生が利用されます。
2つの手続きにおける違いは大きく3点あって、要件の違い、最低弁済額の違い、再生債権者による決議の有無が問題となります。
要件の違い
個人再生をするには一定以上の収入が必要となりますが、小規模個人再生の場合は給与所得者等再生より収入基準が緩く判断されます。
給与所得者等再生の場合、反復継続した収入があるだけではなくて、収入額が安定していなければなりません。
年度ごとの収入の変動率が20%以上あると再生計画が認可されなくて、会社員や年金生活者などの高い確度で収入が安定している人しか利用できない手続きです。
小規模個人再生の場合、収入に変動があっても継続して収入を得られて再生債権を弁済できる見込みさえあれば利用できるので、個人事業主やフリーランスでも適用してもらえます。
ただし主婦などの自分名義の収入のない人は小規模個人再生も利用できません。
最低弁済金額の違い
小規模個人再生と給与所得者等再生では、再生計画案の認可後に支払わねばならない金額も異なる可能性があります。
小規模個人再生の場合、最低弁済額と清算価値保障の原則の2つの基準のうち、高い方が手続き後の返済額となります。
つまり、本人に財産がなければ民事再生法の定める最低弁済額まで借金を減額してもらえますが、財産があると最低限、財産評価額以上の金額を払わねばなりません。
給与所得者等再生の場合、最低弁済額と清算価値保障原則だけではなくて、可処分所得の2年分という要件が加わって、3つの中でもっとも高い数字が再生手続後の返済額となります。
可処分所得とは、給与などの収入額から生活費や税金、保険料などの支払い額を差し引いた残りの金額をいいます。
可処分所得の2年分を計算すると、最低弁済額や手持ち財産額よりも高額になるケースが多くて、結果的に給与所得者等再生を利用すると小規模個人再生より返済額が高額になってしまうケースが多数です。
会社員や公務員などの給与所得者であっても小規模個人再生を利用したほうが借金の減額率が高くて有利になりやすいため、小規模個人再生を利用するケースが多くなっています。
再生債権者による決議の有無
小規模個人再生と給与所得者等再生では、再生債権者の書面決議の有無にも違いがあります。
小規模個人再生では、再生債権者による書面決議がおこなわれて、過半数の債権者によって否決されると負債が減額されません。
給与所得者等再生の場合には再生債権者による決議がおこなわれないので、多くの債権者や高額な債権者が反対していても借金を減額してもらえて、債権者の意向に関係なく手続きを進められるメリットがあります。
なお小規模個人再生を申し立てて再生債権者決議で否決されてしまった場合、会社員や公務員等であれば、あとからでも給与所得者等再生を申し立てて借金を減額してもらうことは可能です。
自営業者などで給与所得者等再生ができない場合、書面決議で否決されたら自己破産を検討しなければならない状況になります。
2回目の個人再生や自己破産への影響
小規模個人再生と給与所得者等再生では、2回目以降の個人再生や自己破産への影響も異なります。
小規模個人再生の場合、回数や頻度に制限がないので、何度でも続けて申立てができます。
小規模個人再生後に小規模個人再生を申し立てるのも自由ですし、小規模個人再生後に給与所得者等再生や自己破産を申し立てることもできて、期間制限もありません。
給与所得者等再生をして計画とおりに弁済を完了した場合、給与所得者等再生の再生計画案が認可されて確定したときから7年間、再度の給与所得者等再生や自己破産の申立てができません。
給与所得者等再生では、再生債権者が反対していても強制的に債権が減額されて影響が大きいため、何度も連続して利用できないのです。
ただし給与所得者等再生を利用しても途中で返済ができなくなった場合には回数や期間の制限は適用されなくて、給与所得者等再生後に小規模個人再生を利用する場合にも制限はおよびません。
まずは小規模個人再生を利用するのが得策
会社員や公務員の方が個人再生をするときには、小規模個人再生か給与所得者等再生をするか選択しなければなりません。
小規模個人再生の方が借金を大きく減らせる可能性が高いため、基本的にまずは小規模個人再生を利用すべきです。
ただし多数の債権者が個人再生の申立に反対している場合や、特定の大口の債権者とトラブルになっていて再生債権者による決議が否決されると予測される場合、給与所得者等再生を利用すべきです。
小規模個人再生か給与所得者等再生か、どちらを選ぶか迷ったときには司法書士が適切な方法をアドバイスしますのでお気軽にご相談ください。
小規模個人再生をするには司法書士にご相談ください
小規模個人再生を申し立てる際には、多数の書類を集めて適式な方法で裁判所へ申立をしなければならなくて、申立後も再生計画案の作成、提出などの対応を進めなければなりません。
特別な法律知識のない個人の方が、独力ですべての手続きをおこなうのは極めて困難です。
司法書士に小規模個人再生を依頼するとスムーズに手続きを進められて、すぐに債権者からの督促も止まり、返済も一時的にストップできるメリットもあります。
杉山事務所は毎月10,000件以上の借金に関する問題を含めた相談を受けていて(※2)、債務整理によって借金を解決してきた実績が豊富な事務所です。
早めに相談すれば解決の選択肢も増えて、債権者ともめるリスクも抑えて小規模個人再生の手続きを完結できる見込みが高まります。
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