給与所得者等再生とは
「給与所得者等再生とは何ですか?」
と多くの方からご相談いただきます。
給与所得者等再生も個人再生の一種ですが、原則的な小規模個人再生とは適用できる要件や借金の減額率、手続きの流れなどに違いがあります。
借金問題を解決するためには適切な手続きを選択することで個人再生が成功しやすくなるため、給与所得者等再生と小規模個人再生の違いや特徴も知っておくべきです。
給与所得者等再生と一般的によく利用されている小規模個人再生との違い、要件や対象となる方についてお伝えします。
給与所得者等再生もくじ(メニュー)
- 1) 給与所得者等再生とは
- 2) 給与所得者等再生の要件
- 3) 給与所得者等再生の効果
- 4) 給与所得者等再生と小規模個人再生の違い
- 5) 給与所得者等再生の対象者
- 6) 給与所得者等再生をするには司法書士にご相談ください
給与所得者等再生とは
給与所得者等再生とは、会社員や公務員などの収入の安定した人が利用できる特別な個人再生手続きです。
個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類があって、小規模個人再生が基本ですが、状況次第では給与所得者等再生を行うことができます。
サラリーマンや公務員の場合、小規模個人再生だけではなく給与所得者等再生も利用できて、どちらかを選べます。
給与所得者等再生は、小規模個人再生よりも再生計画の認可要件がゆるくなっています。
サラリーマンや公務員のように収入が特に安定している人は、再生債務をきちんと支払える可能性が高いので、特別に再生計画が認可されやすい給与所得者等再生を適用してもらえる可能性があるのです。
給与所得者等再生の要件
個人再生の中でも給与所得者等再生を利用するためには、手続きの開始要件と再生計画の認可要件の2つを満たす必要があって、両方を満たしていなければ最終的に借金を減額してもらえません。
それぞれの要件の詳細をお伝えします。
再生手続開始要件
再生手続開始要件とは、裁判所で個人再生手続き開始決定を出してもらうための要件で、満たさない場合にはせっかく個人再生の申立てをしても棄却されて失敗してしまいます。
具体的な内容として、小規模個人再生と共通する要件と給与所得者等再生固有の要件があります。
- 債務者が個人である
- 負債総額が5,000万円を超えていない
- 支払不能のおそれがある
- 再生手続の費用を予納した
- 将来において反復継続的に収入を得られる見込みがある
- 個人再生の申立ての目的が不当なものではない
- 給与または給与に類する定期的な収入がある
- 定期的な収入の変動幅が小さいと見込まれる
- 過去に給与所得者等再生を利用して減額された借金を完済できた場合、前回の給与所得者等再生の再生計画認可決定確定日から7年が経過している
- 過去に個人再生でハードシップ免責を受けた場合、再生計画認可決定日から7年以上が経過している
- 過去に破産した場合、免責決定確定日から7年以上が経過している
給与所得者等再生特有の要件
給与所得者等再生の要件のうち、一般的な小規模個人再生にはない要件を説明します。
給与または給与に類する定期的な収入を得ている
給与所得者等再生を適用してもらえるのは、給与などの定期的で安定した収入のある人だけで、具体的には会社員や公務員やアルバイトなどの人に限られて、自営業者は利用できません。
ただし年金生活者の収入は給料と同じくらい安定しているので給与所得者等再生を利用できます。
定期的な収入の変動幅が小さいと見込まれる
給与所得者等再生を利用するには毎年の給与や年金の変動幅が小さい必要があって、各年度の収入金額が、だいたいプラスマイナス20%以内でないと給与所得者等再生を適用できません。
前回の給与所得者等再生時における再生計画認可決定確定日から7年が経過している
過去に給与所得者等再生を利用して借金を減額してもらった結果、無事に完済できた場合には、以前の給与所得者等再生の再生計画認可決定確定日から7年が経過していないと再度の給与所得者等再生ができません。
過去に利用した個人再生が小規模個人再生だった場合や、過去に給与所得者等再生を利用しても完済ができなくて失敗してしまった場合には、7年の年数制限が適用されなくて、7年以内でも手続きを開始してもらえます。
過去に個人再生のハードシップ免責を受けた場合、再生計画認可決定日から7年以上が経過している
過去に個人再生を利用してハードシップ免責を受けた場合、もととなった個人再生の再生計画認可決定日から7年が経過しないと、再度の給与所得者等再生の手続きを開始してもらえません。
過去に破産した場合、免責決定確定日から7年以上が経過している
過去に自己破産をして免責を受けた場合、免責決定の確定日から7年が経過していないと給与所得者等再生の開始決定を出してもらえません。
再生計画認可要件
給与所得者等再生の再生計画認可要件とは、個人再生手続きが終盤にさしかかったときに、裁判所によって再生計画を認可してもらうために満たすべき要件で、満たさなければ再生計画が不認可になって借金を減額してもらえません。
- 再生計画を遂行してきちんと借金を返済できる見込みがある
- 再生債権の総額が5,000万円を超えない(個人再生の手続内で確定された借金や負債の総額が5,000万円以内)
- 民事再生法による個人再生の最低弁済額を下回っていない
- 再生債権者の一般の利益に反しない(清算価値保障の原則に沿っている)
- 再生計画による支払い総額が、可処分所得額の2年分以上になっている
- 将来、継続的にまたは反復して収入を得る見込みがある
- 給与または給与に類する定期的な収入がある
- 定期的な収入の変動幅が小さいと見込まれる
- 過去に給与所得者等再生を利用して債務を完済した場合、もととなった給与所得者等再生の再生計画認可決定確定日から7年が経過している
- 過去にハードシップ免責を受けた場合、もととなった再生計画認可決定日から7年以上が経過している
- 過去に破産した場合、免責決定確定日から7年以上が経過している
中でも重要なポイントとなる要件を示します。
清算価値保障の原則
個人再生手続きをおこなって再生計画を認可してもらうには、再生債権者の一般の利益に反しないという清算価値保障原則を満たさねばなりません。
清算価値保障原則とは最低限、個人再生を申し立てた人の所持資産の評価額以上の支払いをしなければならないルールです。
所持している資産評価額よりも借金が減額されてしまうと、自己破産させて配当を受ける方が債権者にとって得になってしまいます。
また、財産をもったまま借金だけ減額すると債権者にとって不公平で納得し難いものです。
自己破産の配当金と個人再生の債務減額後の返済額を比較して個人再生の方が得、ということがあってはならないので、最低限所持している資産評価額については、返済しなければならない清算価値保障原則が定められています。
可処分所得額の2年分
給与所得者等再生で再生計画を認可してもらうには、可処分所得の2年分以上の支払いをしなければなりません。
可処分所得の2年分は、原則的な小規模個人再生にはない給与所得者等再生特有の要件で、小規模個人再生の場合には要件になりません。
可処分所得とは、収入から税金や保険料、生活費などの必要経費を差し引いた自由に使えるお金の金額を意味して、居住地や家族関係などによっても具体的な金額は変わります。
給与所得者等再生の場合、可処分所得の2年分を含めた3つのうちもっとも高額な金額以上の支払いをしなければなりません。
- 民事再生法の定める最低弁済額
- 清算価値保障の原則(所持している財産額)
- 可処分所得の2年分
一般的には3つのうち、可処分所得の2年分がもっとも高くなるケースが多いので、小規模個人再生より給与所得者等再生を利用すると、残る借金が高額になる可能性が高くなってしまいます。
給与所得者等再生の効果
給与所得者等再生を適用すると、支払うべき借金の金額が最大で10分の1まで減額されて、原則的に3年で支払っていかなければなりません。
ただしどうしても3年で返済できない特殊な事情があれば、返済期間を5年まで延ばしてもらえる可能性はあります。
個人再生に成功したら借金を大幅に減額できて、毎月の支払金額も減って生活に余裕ができる方が多くいます。
ただし給与所得者等再生の場合、可処分所得の2年分を考慮しなければならないため、小規模個人再生と比較すると返済額が高額になりやすいのがデメリットです。
一般的にはサラリーマンや公務員であっても、まずは小規模個人再生を検討して、難しければ給与所得者等再生をおこなうケースが多数となっています。
借金の減額効果
給与所得者等再生を適用しても、民事再生法の定める最低弁済額は支払う必要があって、具体的にどこまで減額できるかは、残った借金(負債)の総額によって異なります。
残った負債の総額 | 最低弁済額 |
---|---|
100万円未満 | 減額されないで全額支払う必要がある |
100万円以上500万円以下 | 100万円へ減額される |
500万円を超え1500万円以下 | 総額の5分の1 |
1500万円を超え3000万円以下 | 300万円へ減額される |
3000万円を超え5000万円以下 | 総額の10分の1 |
分割払い
給与所得者等再生を適用すると、減額された借金を原則3年で分割払いすることが認められて、状況次第では5年間の分割支払いも認められます。
支払いの頻度については毎月1回や3か月に1回など、状況によって異なる可能性があります。
また給与所得者等再生でも住宅ローン特則を適用できるので、住宅ローン返済中の方であれば家を維持しながら借金の減額や分割払いができるメリットもあります。
給与所得者等再生と小規模個人再生の違い
給与所得者等再生と小規模個人再生の主な違いは、要件の違い、最低弁済額の違い、再生債権者による決議の有無の3点です。
要件の違い
一般の小規模個人再生であれば、残債を返済するのに十分な一定以上の収入があれば利用できますが、給与所得者等再生の場合には金額だけでは足りなくて、収入の安定性が要求されます。
小規模個人再生なら自営業者も利用できますが、給与所得者等再生において自営業の収入は不安定とみなされるため、適用できません。
収入要件については小規模個人再生の基準の方がゆるく設定されているため、多くの人による利用が可能といえます。
返済金額の違い
小規模個人再生の場合、民事再生法の定める最低弁済額と清算価値保障の原則(所持財産の総額)のどちらか大きい方の金額を返済しなければなりません。
給与所得者等再生の場合、最低弁済額と清算価値保障の原則だけではなくて、可処分所得の2年分を上回る金額を払う必要があって、多くのケースでは可処分所得の2年分がもっとも高くなるため、給与所得者等再生を利用すると小規模個人再生よりも支払金額が上がるケースが多数となっています。
支払金額が高額になりやすいのは給与所得者等再生のデメリットです。
再生債権者による決議の有無
小規模個人再生では再生計画認可の際に債権者による決議が行われて、多数の債権者(過半数の債権者または債権額の過半数を持つ債権者)によって否決されると再生計画が認可されません。
給与所得者等再生では債権者決議がおこなわれないので、多数や大口の債権者が反対している場合でも借金を減額してもらえるため、小規模個人再生に失敗した方があらためて給与所得者等再生を申し立てるケースもあります。
多くの債権者が反対していても借金を減額してもらいやすいのは給与所得者等再生のメリットです。
給与所得者等再生の対象者
給与所得者等再生を利用できる人
給与所得者等再生を利用するには、一般の小規模個人再生のケース以上に収入の安定性が求められます。
会社員や公務員などの給与所得者が主な対象ですが、年金生活者も収入金額が足りていれば利用できます。
給与所得者等再生を利用できない人
自営業者や年収に20%以上の変動がある不安定な方、収入のない方や、収入があっても残債の返済に不足する方は利用できません。
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