給料差し押さえの流れと1日でも早くすべき対処方法
「給料差し押さえに対処方法はあるの?」
と多くの方から相談をいただきます。
借金の返済を滞納していると、貸金業者から督促が来て、最終的に裁判所から訴状または支払督促が届くことで給料を差し押さえられます。
ただし、給料を差し押さえられたとしても全額差し押さえられるわけではありません。給料を差し押さえられる前に回避することや、差し押さえられたとしても止めることができますので、対処方法についてくわしくお伝えします。
給料差し押さえもくじ(メニュー)
- 1) 給料差し押さえの上限金額
- 2) 会社にバレるかどうかとバレた時の影響
- 3) 給料が差し押さえられる流れ
- 4) 給料差し押さえを事前に回避する方法
- 5) 給料差し押さえられても止める方法
給料差し押さえの上限金額
借金や税金を滞納しても、給料の全額を差し押さえられるわけではなくて、差し押さえには「上限額」がありますので、借金と税金に分けていくらまで給料を差し押さえられるのかお伝えします。
借金を滞納したときの上限金額
借金返済を滞納すると、カード会社などの借入先から裁判を起こされて支払い命令の判決が出て、給料を差し押さえられる可能性があります。
借金返済にもとづく給料差押えは「手取りの金額の4分の1」が上限で、住民税や源泉所得税、社会保険料などの控除額を引いた税金や社会保険料を控除した金額の4分の1まで差し押さえられます。
たとえば給料総額が30万円、税金等の控除額が8万円の方の場合、差し押さえ金額は5万5千円と計算されます。一度給料を差し押さえられると「完済」まで差押えの効果が継続するので、次の支払日からは「4分の3の金額」しか受け取れなくなります。
一方、税金や社会保険料を控除した金額が44万円を超える方の場合には「33万円を超える全額」が差し押さえ対象で、給料総額が60万円、税金等の控除額が10万円の方の場合、差押金額は(60万円-10万円-33万円=)17万円と計算されます。
税金を滞納したときの上限金額
税金を滞納したときにも給料を差し押さえられる可能性がありますが、借金のケースと差し押さえ上限額が異なります。
差し押さえられるのは、給料の総額から3項目を差し引いた残額です。
- 所得税や住民税、社会保険料等
- 本人の分10万円、同一生計の配偶者や子ども等の親族がいる場合、1人当たり4万5000円
- 総支給額から上記を控除した額の20%
たとえば、総支給額が30万円、所得税などの控除額が8万円、妻と1人の子どもがいる場合、上から8万円、14万5千円、1万5千円となって、差し押さえ可能額は6万円と計算されます。
給料以外に差し押さえられるもの
借金や税金を滞納すると、給料以外の資産も差し押さえられる可能性があります。
不動産
自宅や投資マンションなどの不動産を所有していると、差し押さえられて競売や公売によって強制売却されるケースがあります。
銀行預金、共済貯金、社内積立
銀行預金や公務員の共済貯金、会社員の社内積立などのお金も差し押さえられる可能性があります。
保険、車、その他の財産
積立型の生命保険や子どもの学資保険、貴金属や現金、時計、車などの価値のある財産はすべて差し押さえ対象です。借金や税金を滞納していると、車を強制売却されたり保険を強制解約させられたりして失われる可能性があります。
不動産や預金、保険、車などの動産類には「差し押さえ限度額」がなくて、給料と違い、全部が差し押さえ対象です。差し押さえられたら財産そのものが失われてしまって、家を差し押さえられたら家には住めなくなります。
給料差し押さえで会社にバレるかどうかとバレた時の影響
給料差し押さえを受けたら会社や家族にバレるのか、バレたときに解雇などの影響があるのかも含めてお伝えします。
給料差し押さえを受けると会社に借金がバレる
給料を差し押さえられると、会社にはバレます。
裁判所から会社宛に債権差押通知書が届くので、個人情報の関係があるため従業員全員に知られるわけではありませんが、経営陣や給料、人事の担当者には知られる可能性があります。
給料を差し押さえられたからといって解雇されるわけではありません。給料を差し押さえられてもきちんと業務をこなしている以上、解雇理由が認められず、その他の懲戒事由にも該当しないため、減給や出勤停止、戒告などの処分も受けません。
給料差し押さえ中のボーナスや退職金
給料を差し押さえられると、ボーナスや退職金にも影響が及びます。
裁判所で給料差し押さえが発令されると給料が継続的に差し押さえられ続け、ボーナスの支払いがあると、ボーナスからも税金や社会保険料を控除した金額の4分の1または33万円を超える全額を差し押さえられます。
退職金も差し押さえ対象ですが、限度額が給料や賞与と異なって、「金額にかかわらず4分の1まで」しか差押えができません。給料の場合には高額になると33万円を超える全額が差し押さえられますが、退職金の場合には税金や社会保険料を控除した金額が33万円を超えても4分の1が限度です。
たとえば退職金額の税金や社会保険料を控除した金額が2000万円の場合、差し押さえ対象額は500万円と計算されます。退職金は、給料やボーナスよりも多くの部分を手元に残しやすいといえます。
転職後も給料差し押さえの影響
差し押さえの効力は、会社ごとなので給料差し押さえ後に転職しても、以前の給料差し押さえの効力は及びません。
たとえばA社で給料差し押さえを受けていた人がA社を退職してB社へ移った場合、B社の給料は差し押さえられずに全額を受け取れます。
ただしB社であらためて給料差し押さえを受けたら、B社の給料やボーナスも差し押さえられて、滞納状態を解消しない限り「差し押さえ→転職→差し押さえ」が続いてしまいます。
家族にも借金がバレる可能性がある
給料差し押さえを受けると、家族にもバレる可能性があります。
確かに差し押さえられたからといって、家族に通知は来ませんが、給料を差し押さえられると税金や社会保険料を控除した金額が一気に減って給料明細書にも「差押控除」「その他の控除」などと記載されるので、家族から何のことか問い詰められたら、正直に話さざるを得ません。
ただし給料差し押さえや借金があるからといって離婚原因にはならないので、家族で話し合い、借金問題の解決を目指すことができます。
給料が差し押さえられる流れ
借金や税金を滞納したら、どのような流れで給料が差し押さえられるのか知っておくと対策することができます。
ローンやキャッシングなどの借金滞納と住民税や所得税などの税金滞納で流れが異なるので、分けてお伝えします。
借金を滞納したときの流れ
カード会社や消費者金融、銀行ローンなどの借金、家賃やスマホ代などの支払を滞納すると、最終的には給料差し押さえまでの手続きが進みます。
電話で督促される
支払日までに入金がなくてカードの引き落しを確認できないと、カード会社や消費者金融会社などが電話で督促してきます。
支払日の翌日~1週間以内には電話がかかってくるケースが多くあります。
きちんと電話に出て支払を約束して返済すれば、大きな問題にはならずに給与を差し押さえられることもありません。
督促状や催告書が届く
支払日までに入金しなかったら電話と並行して郵便で督促状が送られてくるケースが多くありますが、はがきが届く場合も封書で届く場合もあります。
業者によって封書などに業者名を表記するかどうかが異なりますが、業者名が表記されると、封書を家族に見られて借金滞納を知られる可能性が高くなります。
家族に借金を隠している場合、借入先からの督促状の処理には要注意で、家族に見つからないように自分で受け取るか、家族に開封される前に自分で見つからない場所にしまうのが得策です。
「督促状」も「催告書」も法的な効果は同じで「借金を支払ってください」と要求するもので、受け取ったら早めに支払う必要があって、業者によっては「督促状」ではなく「催告書」というタイトルの書面を送ってくるケースがあります。
当初は督促状を送ってきて、支払いがなかったら次のステップとして「催告書」を送ってくる貸金業者もあります。
一括請求通知、差し押さえ予告書(内容証明郵便)が届く
普通郵便による督促状や催告書を無視し続けていると「一括請求書」が届きます。
一括請求書とは、そのときの借金残高や遅延損害金、利息を一括で支払うよう求める書類のことで、カード会社や消費社金融、銀行などとの契約では、通常2ヶ月分以上の返済を滞納したら、残額を全額一括で支払わねばならない内容になっています。
滞納すると分割払いできなくなることを「期限の利益喪失」といって、借金を長期滞納して放置すると期限の利益を喪失するので、貸金業者らは一括請求書を送ってきます。
一括請求書には「このまま支払わない場合には差し押さえをします」と書いてあって、いわゆる「差し押さえ予告書」を兼ねるケースがあって、「内容証明郵便」で送られてくるのが通常で、内容証明郵便はポスト投函ではなく手渡し式で、郵便局の印があるなど特徴的なのですぐにわかります。
放っておくと本当に給料を差し押さえられてしまう可能性が高まります。
訴状または支払督促が届く
内容証明郵便の一括請求通知書が届いても放置していると、裁判所で支払督促や訴訟を起こされます。
支払督促を申し立てられると、簡易裁判所から「支払督促申立書」という書類が届いて、受け取ったら必ず2週間以内に「異議申立書」を提出しなければならずに、無視していると給料を差し押さえられてしまいます。
訴訟を申し立てられた場合には、簡易裁判所や地方裁判所から「訴状」や「口頭弁論期日呼出状」などの書類が届いて、無視していると支払い命令の判決がでて給料を差し押さえられるので、必ず答弁書を提出すべきです。
支払督促や訴訟を起こされて対処方法に迷ったら、早めに司法書士・弁護士などの専門家に相談するのが得策です。
差し押さえをされる
支払督促や訴訟で債権者の権利が確定すると、実際に給料を差し押さえられます。
裁判所から会社へ給料差し押さえの決定書が届き、次月からは給料の税金や社会保険料を控除した金額が4分の3または33万円にまで減らされる可能性が高いので、返済を滞納したら 早めに債務整理などの方法で対策するべきです。
税金を滞納したときの流れ
督促状が送られる
税金にはそれぞれ「納期限」があり、期限に一日でも遅れると「滞納状態」になります。
国税か住民税かによっても異なりますが、納期限を過ぎると数日~数十日以内に「督促状」が送られてくるので、給料差し押さえを避けたければ、この段階で早めに税金を払う必要があります。
督促状が発送されて10日が経過すると「いつでも差押ができる状態」になります。
ただし、実際には次のようなステップを踏むので10日で差押えをされるケースはほとんどありませんが、法律上は「いつ給料を差し押さえられてもおかしくない」事態になってしまいます。
催促される
督促状が送られても滞納税を支払わずに放置すると、税務署や自治体の職員が催促してきて、具体的には電話がかかってきたり自宅を訪問されたりするケースが多くあります。
財産調査される
督促状を発送して職員による催促を行っても滞納税が支払われない場合、税務当局や自治体としても「差し押さえ」を検討し始めて、差し押さえの準備として預貯金や保険、不動産などどういった資産があるのか調べて、さらに給料差し押さえのために勤務先の調査も行われます。
差し押さえが行われる
税金滞納の場合、借金と異なり裁判所で支払督促や訴訟を起こす必要はありませんので、ある日突然給料や預貯金を差し押さえられるので、事前の準備は困難です。
税務署や自治体から督促を受けたら、すぐに連絡を入れる必要があって、一括で支払えないなら分割払いなどの提案をすべきです。
税金や保険料は債務整理でも解決できないので、所轄庁と話し合って解決するしかありません。
給料差し押さえを事前に回避する方法
借金を支払えない状態になって放置していると、訴訟や支払督促を起こされて給料を差し押さえられる可能性がありますので、事前に差し押さえを回避する方法をくわしくお伝えします。
借入先の貸金業者に相談する
消費者金融やカード会社、銀行の借金を返せないなら、まずは貸金業者に相談してください。
相談のタイミングはできるだけ早い方が有利で、滞納前であれば相手としても柔軟に対応してくれやすくて、滞納しても数日であれば大きなトラブルにはなりにくいです。
たとえば滞納後に電話がかかってきたとき、すぐに支払方法を話し合って約束通りに入金できれば差し押さえをされる心配はありません。
貸金業者に返済方法を相談するときには、3つの点を具体的に伝えるべきです。
まずは、滞納した金額をいつまでに払うのか、一括払いできるのか分割になるのかなど説明します。
2点目は、なぜ滞納したのかの理由の説明で、仕事をクビになった、健康を害したなど特殊な事情があれば、状況に理解を示してもらいやすくなります。
3点目は、入金が可能な理由で、今月は急な出費が多くて滞納したけれど来月は平常運転にもどるので支払えるなど、説明できれば貸金業者に納得してもらいやすくなります。
債務整理をする
今までの条件では支払の継続が困難な状況になったら、債務整理をするべきで、債務整理とは、借金を整理するための手続きで、借金返済額を減額あるいはゼロにすることができます。
債務整理にはいくつか種類がありますが、まずは任意整理を検討すべきです。
任意整理とは、借入先の債権者と裁判外で協議して借金の利息をカットしてもらい返済方法を決め直す手続きです。
裁判所を利用せず必要書類も少なく費用も安くので、債務者に負担の軽い手続きとなっています。
カードや消費者金融のキャッシングは非常に利息が高額ですが、任意整理したら利息を全額カットしてもらえるので返済が楽になります。
債務整理したら差し押さえはされない
通常、任意整理などの債務整理が開始すると、その後に差し押さえをされるケースはほとんどなくて、特に司法書士・弁護士などが介入すると、債権者から直接の督促は来なくなって、電話も郵便も届きません。
既に訴訟を起こされていても、和解が成立すれば給料差し押さえを避けられます。
差し押さえ予告通知が来てからでも遅くはないので、直ぐに司法書士・弁護士に依頼して任意整理をするべきです。
給料差し押さえられても止める方法
債務整理の種類には「個人再生」や「自己破産」があります。
個人再生とは、裁判所へ申立をして借金を元本ごと大きく減額してもらえる手続きです。
任意整理では利息をカットできるだけですが、個人再生なら元本も含めて最大90%を減らしてもらえます。
自己破産は裁判所へ申立をして借金やその他の負債をまるごと免除してもらえる手続きで、個人再生や任意整理であれば借金が残りますが、自己破産をしたら借金が全額免除されます。
給与差し押さえをされても、個人再生や自己破産をすると止めることができるので、具体的な方法をくわしくお伝えします。
個人再生
個人再生の申立て後は「給料差し押さえの中止命令」を申し立てることができて、中止命令が認められると給料の差し押さえが止まります。
個人再生の「手続き開始決定」があると、給料差し押さえが中止されます。
ただし個人再生によって給料差し押さえが中止されても、全額を受け取れるわけではなくて、残りの部分が支払われるのは「手続きが終了してから」です。
すぐに全額を受け取りたい場合には、別途「強制執行の取消命令」を申し立てて認められなければなりません。
給料差し押さえが取り消されると、給料を全額受け取れるようになります。
自己破産
処分する財産がある場合は「管財事件」、処分する財産がない場合は「同時廃止」と呼ばれています。
自己破産の場合にも、給料の差し押さえが止まります。
ただし、自己破産の場合、処分する財産がある場合は「管財事件」、処分する財産がない場合は「同時廃止」という2つの手続きの流れがあって、同時廃止になるか管財事件になるかで給料差し押さえのが変わるのでわかりやすくお伝えします。
同時廃止の場合
簡易な手続きである同時廃止になった場合、手続き開始決定とともに給料差し押さえが中止されますが、すぐには全額を受け取れません。
差し押さえ対象金額が会社にプールされ続け、無事に「免責決定」が確定したときにまとめて受け取れます。
管財事件の場合
複雑な手続きである「管財事件」が選択された場合、手続き開始決定とともに給料差し押さえを止めることができて、給料を満額受け取れるようになります。
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