借金を踏み倒すリスクと踏み倒さずに解決する方法
「借金を踏み倒すことはできないの?」 と相談を受けることがあります。
借金を踏み倒すことは難しくて、借金を踏み倒そうとして返済を延滞していると、大きなリスクがあります。信用情報に事故情報が登録されてブラックリスト状態になったり、業者から裁判を起こされて最終的には差し押さえられてしまったりします。
返済が苦しい場合は、借金を踏み倒そうとせずに、借金を減額またはゼロにすることで解決することができますので、手続き方法をくわしくお伝えします。
借金の踏み倒し
もくじ(メニュー)
- 1) 借金を踏み倒すリスク
- 2) 借金を踏み倒せない3つの理由
- 3) 借金を踏み倒さずに解決する方法
借金を踏み倒すリスク
借金を踏み倒そうとして、返済を延滞していると大きなリスクがありますのでくわしくお伝えします。
債権者から督促される
クレジットカードや消費者金融などの借金を払わずに放置していると、業者から電話や郵便などで支払いを督促されます。
多くの場合には支払期日の翌日~1週間くらいで電話連絡をしてきて、「はがき」や「封書」などの督促書も送ってくるため、複数のカード会社やサラ金で借り入れをしていると、毎日のようにいろいろな業者から連絡がきて大きなストレスを抱えてしまいます。
遅延損害金が発生する
借金返済を1日でも遅延すると「遅延損害金」が発生します。
遅延損害金とは、借金を払わなかったことによって債権者に発生する損害賠償金で、利息と同じように「年率」で計算されます。
多くの貸金業者において遅延損害金の利率は年率20%近くになっていて、たとえば100万円を1年間遅延し続けると遅延損害金は20万円にもなるので借金が雪だるま式に膨らんでしまいます。
借金を踏み倒そうとすると、かえってどんどん借金が高額になってしまうリスクがあります。
ブラックリストに載る
借金を2、3ヶ月以上返済せずに放置していると、個人信用情報に事故情報が登録されていわゆる「ブラックリスト」の状態になります。
個人信用情報とは、カード会社や消費者金融が貸付審査を行うときに参照する「個人の返済能力に関する情報」のことで、ブラックリスト状態になると信用情報に「延滞情報」が登録され、カード会社や消費者金融、金融期間の審査に通らなくなります。
新規のクレジットカードは作れなくてキャッシングも利用できず、スマホ端末の分割払いもできなくなってしまいます。
今まで使っていたクレジットカードも、次回更新のタイミングなどで利用停止にされて、住宅ローンや車のローン、教育ローンなども組めなくなって、さらに子どもの奨学金の連帯保証人にもなれません。
通常の不動産賃貸借契約などは利用できますが、信販系の保証会社が入る物件では審査に通らなくなって、ブラックリスト状態になると、一切のカードやクレジット借り入れができなくなって、大変不便な生活を余儀なくされてしまうのです。
借金返済を延滞してブラックリスト状態になった場合、当然ですが延滞分を払って遅延を解消しないと事故情報は消えずに、信用情報から事故情報が消えるまでには「延滞解消後5年間」程度かかります。
聞いたことのない債権回収会社から請求される
借金を踏み倒そうとして放置すると、聞いたこともない名称の債権回収会社から督促されるケースがあります。
債権回収会社とは、不良債権の回収を専門的に行っている業者です。
長期間滞納状態が続くと消費者金融やカード会社は債権回収会社に債権譲渡したり回収委託すると、受託した債権回収会社が督促してくるので、いきなり「○○債権回収」などと書かれた督促書が送られてきて「詐欺ではないか?」と怯えてしまい、不安になってしまう方が多くいます。
裁判を起こされる
借金返済せずに放置していると、業者から一括払いの請求書が届いて支払督促や訴訟などの裁判を起こされるケースが多くあります。
裁判所から自宅あてに書類が届いて裁判所に呼び出されたら、平日の昼間に裁判所に行かねばならず多くの方にとって負担です。
裁判に対応しないと相手の言い分を全部認めた扱いになって、相手の申立通りの支払い命令が出てしまうので、異論があるなら必ず答弁書や督促異議申立書を提出する必要があります。
給与や銀行口座、財産を差し押さえされる
裁判を起こされて判決が確定したり支払督促を無視し続けたりすると、債権者に「差押の権利」が認められて、放置していると債権者は「差し押さえ」を申し立ててきます。
- 預金
- 保険
- 不動産
- 車
- 株式
- 投資信託
- 給料
- 価値のある動産類
判決が確定すると「いつ何を差し押さえられるかわからない状態」になります。たとえば家を差し押さえられると、家が競売で売却されて住めなくなって、保険を差し押さえられたら保険が強制解約されます。
家族や職場に借金がバレる
借金を支払わずに放置していると、家族や職場にバレてしまうケースもあります。
家族に秘密の借金がバレるのは、業者からの督促状を見られてしまうことが多くあります。
支払いをしなかったら自宅へはがきや封書の督促状が届き、2~3ヶ月以上放置していると内容証明郵便で一括請求書が送られてくるため、家族に郵便を発見されて、不審に思われて問い詰められ、借金を知られてしまうのです。
家族に知られたくない方は、滞納する前に債務整理などの対応をしなければなりません。
職場にバレるパターンとして多いのは「給与差し押さえ」です。
借金を放置して支払い命令の判決や仮差押命令が出ると、業者は債務者の給料を差し押さえられる状態になります。
給与差し押さえの決定が出ると裁判所から会社へ差し押さえ決定書が送られてくるので、会社には確実に知られて、公務員の場合にも勤務先の役所や省庁などに知られてしまいます。
プライバシーがあるので職場の人全員に周知されることはありませんが、噂になって居心地が悪くなったり将来の昇進が危うくなったりするので、職場に借金を知られたくない方は、差し押さえを受ける前に借金を払うか債務整理すべきです。
保証人に迷惑をかける
借金に保証人や連帯保証人がついているときに長期に渡って支払いを放置していると、保証人に多大な迷惑をかけてしまいます。
借金した本人が約束通りに支払いをしない場合、保証人や連帯保証人へ督促されてしまうためです。
保証人らに請求されるときには「残債の一括払い」になっていて、それまでに発生した「遅延損害金」も加算されて金額が膨れ上がっているケースでは、請求を受けて驚いた保証人が主債務者へ苦情を申し立てて人間関係のトラブルにつながってしまう事例がよくあります。
借金以外の税金や養育費を踏み倒すリスク
税金・保険料
住民税や健康保険料、年金保険料などを払えなくなったら、税務署や役所から督促が来ます。
税金や保険料の滞納については、裁判をせずにいきなり「差し押さえ」ができる制度になっているので、放置しているとある日突然家や車、預金などを差し押さえられる可能性があります。
養育費
離婚した妻と養育費の約束をしていたのに支払いが苦しくて滞納してしまったら、苦情の連絡や督促を避けられません。
公正証書を作成していた場合にはいきなり給料を差し押さえられ、職場にも養育費の滞納を知られてしまいます。
公正証書がない場合には養育費の調停を申し立てられて、何度も裁判所へ通って養育費を払うように説得されますし、最終的には「審判」になって養育費の支払い命令が出るので、養育費からは逃れられません。
家賃
家賃を滞納し続けると、大家から賃貸借契約を解除される可能性が高くなり、解除が有効となれば、家に住む権利が失われて家を出ていかねばなりません。
電気・水道・ガスなどの公共料金や通信費
水道光熱費やスマホ代などの通信費を滞納すると、生活インフラやスマホを利用できなくなる可能性があります。
スマホの場合、滞納するとすぐに利用停止にされ、放置し続けると強制解約されますし、滞納分を完納しないと別の電話会社でもスマホを契約できません。
電気ガス水道などはすぐには止められませんが、何度か督促を受けてどうしても払わない場合には最終的に止められてしまう可能性もあります。
水道光熱費や通信費を支払わないと生活の基本部分が成り立たなくなってしまうので、困ったときには早めに対応しなければなりません。
借金を踏み倒すと罪になる可能性
借金の踏み倒しは「罪」ではありません。
罪になるのは「刑法」やその他の「犯罪」になる場合のみですが、「借金の踏み倒し罪」はないので、「返そうと思って借りたけれども支払いが苦しくなって返せなくなった」だけであれば犯罪になりません。
ただし、「はじめから返す意思も能力もなかったのに『返す』と嘘をついて騙して借りた場合」には「詐欺罪」が成立する可能性があって、たとえば収入資料や資産に関する資料を偽造したり、他人の身分証明書を勝手に使ったりした場合などです。
詐欺罪の刑罰は「10年以下の懲役刑」であり非常に重いので(刑法246条)、返済が難しい状態になっているなら嘘をついて借り増ししてはいけません。
借金を踏み倒せない3つの理由
夜逃げしても居場所がバレてしまう可能性がある
借金を踏み倒すために「夜逃げ」する方がおられます。
夜逃げとは、住民票のある場所から別の場所へ引っ越しをして住民票を異動せず、電話番号や職場も変えて「居場所を隠すこと」です。
夜逃げしたら債権者にとっては「債務者が行方不明」ですから借金の請求が困難となって「踏み倒し」が可能となるように思えますが、 実際には夜逃げをしても「住民票」を移すと債権者には簡単に知られてしまいます。
住民票を異動させなければよいと思うかもしれませんが、住所が実際の居住場所と異なる場合、健康保険を始めとするさまざまな公共サービスを受けにくくなって、実印の印鑑登録などもできません。
借金の督促が来なくなって「そろそろ大丈夫だろう」などと考えて住民登録した途端に貸金業者に居場所がバレて、督促の書類が届くパターンが多くあります。
ネットやSNSに書き込みをしたり、報道関係の画像などに写り込んだりしたことがきっかけで、債権者に居場所を知られる方もいます。
夜逃げしても法的に支払い義務が免除されるわけではなくて、居場所がバレてしまうと、督促されて訴訟を起こされたり差し押さえを受けたりする高いリスクが発生します。
時効成立は難しい
借金を踏み倒そうとする方は、時効が成立して払わなくてよくなると考えている方が多いですが、現実的に時効を成立させるのは困難です。
借金には消滅時効制度が適用されます。
- 請求できることを知ってから5年
- 請求できる状態になってから10年
いずれか早い方の時期が来たら、借金の時効が成立して支払いをしなくて良い状態になります。
消費者金融やカードなどの借金の場合には、通常「最終弁済日から5年(一回も返済していない場合には初回の支払い予定日から5年)」が経過したときに借金の消滅時効が成立します。
債務者が時効の効果を発動させるには「時効援用」をしなければならなくて、時効援用をしない限り、借金の消滅を主張できないので時効に必要な期間が経過したら早めに時効を援用すべきです。
ただし、時効を成立させるのは難しいです。
夜逃げして債権者から身を隠すと、住民票を異動しない限り債権者からは見つからず督促が来なくなるケースがありますが、最終弁済日から5年以内に「裁判」を起こされると時効を止められてしまいます。
時効には「更新」制度があって、時効の期間中に「更新」が起こると時効期間が巻き戻って当初からの数え直しになってしまいます。
裁判は時効の更新事由になっているので、時効の成立前に裁判を起こされたら時効は成立せずに、判決が確定すると時効期間は10年間延長されます。裁判を繰り返されると永遠に時効が成立しない可能性もあります。
また、裁判には「公示送達」という制度があるため、夜逃げして居場所を隠していても、裁判を起こされる可能性があります。
公示送達とは相手の居場所がわからないときに、裁判所へ掲示することによって相手に訴状を送ったとみなす手続きで、相手に居場所を知らせていない場合、知らない間に公示送達を使って裁判を起こされて判決が下される可能性があります。
公示送達による判決であっても時効は更新されるので、結局は時効が成立しません。
結婚や養子縁組で苗字を変更してもバレてしまう
借金を踏み倒したい方は、結婚や養子縁組によって名字を変えることにより、本人特定できないようにしても、借金を踏み倒せません。
貸金業者や金融機関は債務者の「戸籍謄本」や「戸籍の附票」「住民票」を取得できるからで、戸籍を見たら「結婚」や「養子縁組」による名字の変更が記載されているので本人特定できて、住民票や戸籍附票をみたら引越し先の住所が判明します。
結婚や養子縁組によって名字を変えて引っ越しをして電話番号などをすべて変更しても、借金の踏み倒しは困難です。
借金を踏み倒さずに解決する方法
借金がある場合、踏み倒しにはリスクがあって難しいので、債務整理することで毎月の返済額を減らすまたはゼロにして借金を解決することができます。
債務整理とは、借金をはじめとする負債のトラブルを解決するための手続きで、カードローン、クレジットカード、キャッシング、車のローン、住宅ローン、連帯保証債務など、ほとんどすべての負債の問題は債務整理によって解決できます。
債務整理には「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3種類の手続きの種類があるので、くわしくお伝えします。
任意整理
任意整理は債権者と直接交渉して借金の返済方法や返済期間を決め直す手続きで、特徴は「裁判所を使わず債権者と直接話し合う」点です。
必要書類もほとんどなくて、期間も短くすむケースが多く費用も安いので、債務者にかかる負担は小さいくて家族に知られるリスクも小さくなっています。
ただし任意整理では大幅な借金の減額は期待できずに、カットできるのは「合意後の利息」部分がほとんどなので、元本は支払わねばなりません。
債権者と合意した後の支払期間は3~5年とするのが一般的で、たとえば180万円の借金を5年にわたって返済する場合、毎月3万円ずつ払っていけば最終的に完済できます。
任意整理には「減額率が小さい」などのデメリットはありますが、家族にバレにくく手続きが簡単で財産がなくならないなどの大きなメリットがたくさんあるので、ある程度の収入があって利息をカットできれば3~4年で返済できる方は、任意整理すべきです。
個人再生
個人再生は裁判所を通じて借金などの負債を元本ごと大きく減額してもらえる手続きです。
任意整理と違い、裁判所へ申立をして重厚な手続きを進めなければならないので、必要書類も多く期間も長くかかり、債務者にかかる負担が大きくなります。
特徴は「元本ごと借金を大幅に減らせる」点で、手持ちの財産にもよりますが、5分の1~10分の1程度にまで借金額を減らせるので滞納額が膨らんでしまった方には非常に効果的です。
ただし個人再生を利用するには「一定以上の収入」が必要なので、無職無収入の方や収入額が低すぎる方は利用できませんが、会社員や自営業者、年金生活者、アルバイトや派遣労働者の方などは利用を検討してみる価値があります。
また、個人再生のメリットには「住宅ローン特則」を使える点で、住宅ローン特則とは、住宅ローンについては支払いを継続し、他の借金のみを減額対象とする制度で、住宅ローン特則を適用すると住宅ローン返済中の方であっても家を失わずに借金を整理できます。
任意整理では奨学金は対象にできませんが、個人再生なら奨学金も減額対象にしてもらえます。
ただし奨学金を個人再生すると、連帯保証人や保証人に残債務を一括請求されてしまうので、事前に保証人らへ事情を伝えておく必要があります。
自己破産
自己破産は裁判所に「免責」してもらうことにより、借金やその他の負債の支払い義務を免除してもらう手続きで、借金だけではなく未払い家賃や未払いのスマホ代、下水道料金以外の水道光熱費など、ほとんどすべての負債が完全に免除されます。
任意整理や個人再生と違って「返済が残らない」ので、低収入や無収入の方でも利用できるメリットがあって、借金額に限度額や最低金額はなく数十万から数十億円以上まで、どのような状況であっても適用してもらえる可能性があります。
ただし自己破産すると手持ちの財産も失われるデメリットがあり、残せるのは生活に必要な最低限度の資産のみですので、無職無収入で返済能力のない方、借金が高額すぎて減額してもらっても払えない方、失う財産がない方などは自己破産すべきです。
税金や保険料、養育費を滞納している場合
カードや銀行、消費者金融などの借金であれば、債務整理によって解決できますが「税金」や「保険料」「養育費」を支払っていない場合には債務整理を適用できません。
税金、保険料、養育費は個人再生でも減額されませんし自己破産でも免除されず、もちろん任意整理による減額交渉も受け付けてもらえません。
債務整理をしても、全額支払わねばならず、放っておくと差し押さえをされる可能性もあります。
天災や病気、けが、低所得などの事情があれば支払いを待ってもらえたり、分割払いをさせてもらえたりできるケースが多いので、税金や保険料を払えない場合には、早めに税務署や役所へ相談すべきです。
養育費を払えない場合には子どもの親権者に事情を伝えて相談すると、支払いを待ってもらえたり、月々の金額を減額してもらえたりする可能性があります。
現在の養育費が高額すぎて払えない場合、家庭裁判所で「養育費減額調停」を申し立てれば適正な水準に養育費の金額を落としてもらえる可能性があります。
借金の踏み倒しを試みても失敗する方がほとんどです。
放置していると遅延損害金もかさみ、差し押さえのリスクも高まってしまうため、良いことは1つもなく、ほとんどの借金トラブルは債務整理によって解決できるので、踏み倒しを考える前に司法書士・弁護士に相談ください。
過払い金請求、債務整理は無料相談をご利用ください。